Top > 北二番丁迂回走行の記録 “そのとき、バスは”

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仙台の秋を賑わす「みちのくYOSAKOIまつり」。いつしかその規模は大きなものとなり、仙台のお祭りの中でも屈指の存在となりました。
さて、このイベントに限らず、仙台で行われる全国的に知れ渡った大型イベントでは、仙台市中心部のメインストリートである定禅寺通を筆頭に、道路の封鎖と歩行者天国化などが行われることが多々ありますが、この「みちのくYOSAKOIまつり」も例には漏れず、定禅寺通の東行き車線の時間帯による通行止めが行われました。
その定禅寺通といえば、宮城交通のバス路線ではありませんが、仙台市交通局の交通局大学病院前を起点とする系統のほぼ全てが通る道路。ここを起点とする系統とは、仙台市の南東部から南西部へかけての全域へ向かう系統ですから、この区間の通行止めに合わせて迂回運行が行われるのは当然のことといえます。
2007年の定禅寺ストリートジャズフェスティバル(以下JSF)より、その迂回経路に変化が見られました。JSFのときは夜間でしたが、今回の「みちのくYOSAKOIまつり」については昼間に迂回運行されるとのこと。これは興味深いことになりそうだと、早速私は様子を見に行ってみたのでありました。
※ 本文中の画像は、原則クリックすると拡大画像を表示できます。

1. 経路概略
Map 左の地図は、今回の迂回経路と通常経路の違いについて説明したものです。
今回の交通規制による迂回運行は下り便のみが対象でしたので、通常経路についても下り便のみを記しておりますが、赤実線が今回の迂回経路、青点線が通常経路です。
先にも述べたように、2007年のJSFのときから今回の迂回経路が用いられるようになりましたが、その前は交通局大学病院から通常南に向かうところを北に向かい、突き当たりになる大学病院前の交差点を右折。そのまま国道48号線を東に向かい、東二番丁通を右折。再び直進を続け、やがてそのまま既存経路に合流という形でした。このとき、途中にある大学病院前、木町通二丁目、二日町・北四番丁、県庁市役所前の各停留所における客扱いはありませんでした。
一方の2007年より始まった北二番丁を用いた迂回経路は、交通局大学病院を出る時点では通常と同じく南向きですが、最初の交差点で早速左折。そのまま隘路を直進し、宮城交通の北二番丁二日町停留所を通過し、東二番丁通で右折。直進を続け、やがて既存経路に合流というものです。このときも、途中に県庁市役所前停留所がありますが、ここでの客扱いはありません。
このような経路の変更に至った背景は明確なアナウンスがありませんが、木町通二丁目→二日町・北四番丁停留所の間の右折が交差点の信号制御の都合から遅延の原因になり易いことと、その一方で北二番丁通りは東に向かう一方通行路であるため、東二番丁通への合流が容易であることというメリットとデメリットがうまくかみ合ったことによるものではないかと考えられます。ただし、この迂回経路は半分以上に渡る距離がバス一台で幅員一杯の隘路であるために、路上駐車がある場合はそこで立ち往生してしまうというリスクもあり、沿線での交通局職員による警護が必要不可欠になるなどの問題があるように見受けられます。

2. 迂回走行の様子を追う
実のところ、この迂回計画を見たとき、「えっ、あの細い北二を通すの?」と驚いたものでした。確かに冷静に考えてみれば宮城交通の北二番丁二日町停留所はありますが、それだって路上駐車の車を回避しようとすれば街路樹の枝がバスの窓を叩くほど、幅の限られた道路です。そこを、宮城交通は2時間〜3時間に1本の便数が僅少な系統を通すのみに留まっていますが、交通局の迂回運行ともなると、便数こそ少なくなる休日ダイヤとはいえども、2分に一本ぐらいの割でバスが通過する計算になりますから、なかなかのビッグイベントです。
そこで、要所々々、北二番丁らしいところを走る様子を眺めに、足を運んだのでありました。

(1) 北二番丁に入る
まず訪れたのは交通局大学病院前停留所を出て間もなく、北二番丁に入り込む交差点です。
落ち着いて見てみると、そんなに難易度の高い交差点ではないのですが、やはり太い道路から急に一方通行の隘路に入るということもあって、精神的には緊張せざるを得ない左折になるのではないかと思いますが、やはりプロの腕は侮れません。まったく問題なく次々と左折して行きました。
なお、この場所は横断歩道上における歩行者などの巻き込み防止という観点からなのか、交通局職員による誘導がありました。
蒲生行きの岡田所の1093号がやってきました。
写真をよくよく見ると、左にウインカーを倒している状態であることがわかるかと思います。
誘導する職員さんが、横断歩道を往来する人を優先すべく、一旦停止を指示しています。
やはり乗用車とは勝手が違いますが、しかし大きな車体を揺らしながら、左に曲がって隘路へ進入となりました。

(2) 一時停止信号のある交差点にて
やはり隘路と隘路が交差する交差点は緊張そのものです。見通しも悪ければ、自動車よりも動きが読みにくい歩行者、自転車が多く、バスを運転している場合に限らず、この辺りの走行時は手に汗を握るものです。
交差点のすぐそばでの撮影は危険であったため、道路がやや広くなる辺りから望遠で撮影しました。
緑ヶ丘三丁目行きの長町所の0082号がやってきました。
ここでも交通局の職員さんの誘導に従って走行しますが、まずは一時停止です。
慎重に交差点を通過し、徐々に速度を上げていきます。
この辺りは特に道が狭く、路肩の縁石が切れている箇所に路上駐車されてしまうとバスが動けなくなりますので、このようにそのような駐車が考えられる箇所には交通局のコーンが立てられ、「駐停車はご遠慮ください」という旨の紙が吊り下げられています。

(3) 晩翠通との交差点にて
ここで晩翠通を横切ることになります。青信号の時間は南北方向、即ち晩翠通の方向が長くなるように設定されているため、信号待ちの車列が北二番丁側には形成されてしまいます。
信号待ちの列の最後尾に、緑ヶ丘三丁目行きの長町所の0424号と、大和町経由霞の目営業所行きの岡田所の6124号が見えます。
車道の幅員がバスと乗用車の並べるだけの幅ではないため、左折する車で詰まるとバスも前へ進めません。しかし、これはやむをえないことです。歩行者信号が赤になるまで、暫く待つしかありません。
どうにか信号が青のうちに、対岸へ渡ることができました。

(4) 再び隘路を行く
この辺りにはパーキングメーターも設置されており、路上駐車されてしまう可能性が十二分に考えられます。ですが、宮城交通の定期バス路線ですから、路上駐車で足止めされるようではなりません。
ここで、隘路専門の中型車、長町所の5636号が野草園行きとしてやってきました。続くのは三本塚経由藤田行きの霞の目所の6407号です。中型車にとっては、この程度の道幅は何ということはありませんが、それでも路上駐車の乗用車があったならば、ちょっと速度を緩めてしまうのではないかと思われる幅です。
しかし、こうして見てみると意外に余裕があるのかもしれません。街路樹が圧迫感を出しているため、道幅が狭く思えるだけなのかもしれません。

(5) やっと広い道路へ
長かった北二番丁もやっと出るときが来ました。いよいよ仙台市中心部の南北を貫く幹線道路、東二番丁に出ます。
この辺りは先にも述べたように宮城交通の定期バス路線ですので、このようにバスと乗用車が並ぶぐらいの幅はあります。写真は新田二丁目東行きの東仙台所の6132号です。
比較的最近まで県庁市役所前を始発とする便を多数持っていた東仙台所。しかし、ここを回送経路として用いることは稀であったため、慣れぬところでの事故だけは御免とばかり、入念に右見て左見ての、慎重極まる運転で右折します。
いよいよ、走りやすい、そして走りなれた東二番丁通です。県庁市役所前停留所が早速見えてきますが、今日はここは通過です。

(6) そして、商工会議所へ
普段は定禅寺通から右折する形で東二番丁通へと入りますが、今日だけは既に東二番丁通を快走中。いつもと違うアプローチで、通常経路へ合流します。
このとおり、写真の定禅寺通は東行き車線が通行止め。対向車線となる西行き車線は特に規制がないため、ここを通る上り便のバスは通常経路での走行となりました。
ということで、通常ここを直進する光景はまず見られない、霞の目営業所のみに配属されたエアロスターのCNG車も、今日はここを直進します。古城三丁目経由霞の目営業所行きの霞の目所の0926号です。

3. まとめ
今回の迂回運行の印象としては、経路設計には思いのほか問題が感じられず、また例年行っていた北四番丁を通る迂回運行よりも渋滞に飲まれるリスクが小さいなど、メリットが大きかったようにも感じられます。
しかし、これは今回に限らず、これまでも言えたことですが、途中の停留所での客扱いが行われないということは、即ちこの区間で乗車している乗客はいずれも交通局大学病院前から乗車した利用者。そう考えると、いささか過剰供給の感が拭いきれません。更には、元々は生活道としての性質が強い隘路を大型バスが雁行するということを考えても、この過剰供給は単に交通局の経営を考えて案じるのではなく、地元住民への配慮の必要性という見地から、検討の余地が感じられてしまいます。
バスの定時運行、そして利用者への供給量の犠牲を可能な限り抑えるというバス事業者としての当然の責務は遂行しており、その点においては褒め称えるに値するこの選択ですが、既にメディアテーク前、市民会館前での営業運行はされないわけですから、便数を削減するなどの形で隘路走行を支える地元への負担を軽減する工夫が求められるような印象がありました。
いずれにしても、昨今一番問われるバスに対する問題に応えること、即ち時刻の定時性確保という点においては適切な判断であったと思います。安全確保の上での課題は局内でもクリアな形でまとめられることでしょうから、それを踏まえて更なる迂回運行時の対応につなげて欲しいものであると、一人のバスファンとして思うに至ったのでした。


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