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乗車券いろいろ
1. 電車普通乗車券
運賃は一律で定められておりましたので、一般的な車内補充券のような大型のものではなく、硬券と同じぐらいの大きさの乗車券でした。地紋は仙台市章と“せんだいしこうつうきょく”となっています。 最近の乗車券は、やはり金額だとか、乗車区間が明瞭なデザインとなっており、このような肝心な金額が小さく印字された乗車券を見ると、事務的なニーズの歴史的変化が読み取れてしまいます。 この当時の運賃は20円という事ですから、物価の変動を視野に入れて考えても、やはり“路面電車”という交通機関は運行コストが抑えられるという点でも高い評価を得ている点が納得できます。
画像提供 : 鈴木 慶一氏(旧型貨車保存図鑑・www.FreightCar.jp) |
2. 電車回数乗車券
回数乗車券も当然存在していました。11枚綴りで200円という事ですから、1枚分のおまけ付きという計算になります。現在のバスカードの場合、1000円券は1100円分ですので、これと同じ比率の割増があった事になります。 なお、興味深いのは裏面です。公営交通の建前、あまり企業の宣伝媒体となってはいけない気もするのですが、この当時はこのように堂々と回数券の裏面が広告媒体として活用されていました。何とも古き良き時代を思わせる、風習の違いが垣間見られます。
画像提供 : 鈴木 慶一氏(旧型貨車保存図鑑・www.FreightCar.jp) |
3. 電車乗換乗車券
基本的に路線系統は生活に密着した、需要に合わせた整備が行われましたが、それでもやはり乗り継ぎは当然必要となります。そこでこのような電車乗換乗車券が活躍していました。指定箇所に車掌の鋏が入れられる、車内補充券を発行するような趣きの発券作業が乗り継ぎ電停の直前で車内で見られたのでしょうか? このように2色の乗車券が用意されていました。この色の違いは何を示すのか、気になりましたので画像提供者の鈴木氏に問い合わせたところ、恐らくは午前/午后で色を使い分け、色については前者は緑、後者は赤という事ではないかとの事ですが、あくまで推測との事です。どなたかご存知の方はご教示下さい。 なお、回数券同様、この乗車券も広告媒体として活用されていました。どうも私はこの広告以外の広告が掲載された乗換乗車券を見た事がないのですが、各券種一つの広告主と決まっていたのでしょうか?
画像提供 : 鈴木 慶一氏(旧型貨車保存図鑑・www.FreightCar.jp) |
4. 市電北仙台線廃止記念優待乗車券
乗車券紹介も、栄枯盛衰の枯、そして衰の部へ突入しました。 仙台市電の中途廃止路線というと、芭蕉の辻線と、この北仙台線だけです。その北仙台線の廃止記念優待乗車券です。裏面にはお礼のことばとして、「市電北仙台線は昭和12年10月18日北仙台駅前←→北四番丁間(1,205m)を営業開始以来、今日にいたりましたが、このたび廃止するに際しまして31有余年のあいだ絶大なる御愛顧を賜りましたことを厚くお礼申し上げます。」とあります。有効となる区間は北仙台駅前から北四番丁ではなく、更に一つ先の市役所前まででした。 ところで描かれている車輛が気になるところですが、これはモハ100型123号です。そうです、あの仙台市電保存館に保存されたモハ123なのです。とはいえ、車号だけで、イラストを見るとあちらこちらに誤りが見受けられます。
画像提供 : 鈴木 慶一氏(旧型貨車保存図鑑・www.FreightCar.jp) |
5. おなごり乗車券(仙台市電おなごり乗車記念)
仙台市電も全線廃止の時を迎えます。その際に発行されたのがこの乗車券で、券面には仙台市街地の路線系統と地図が描かれています。“長い間ご愛用ありがとうございました”の表記には、何とも泣かせるものがある気がしてなりません。 上の北仙台線廃止の記念乗車券に描かれたのがモハ123号ならば、こちらは当然とばかり、モハ1号が描かれています。丁度廃止直前に動態状態に復活しましたので、当時最もタイムリーな形式であり、しかも結果的には他の形式よりも何よりも、仙台市電の生き証人となりましたから、やはり最適な形式として抜擢されたのでしょう。細かいですが、上のモハ123号がヒューゲル集電なのに対し、こちらのモハ1号はスケッチの際、当時の実物を観察したからか、それとも市電黎明期を想定してなのか、きちんとポール集電になっています。
画像提供 : MR520改氏 |
ここで紹介した乗車券は、あくまで仙台市電で用いられていた乗車券の極一部、氷山の一角に過ぎません。
私は乗車券コレクターではありませんが、それでも乗車券は時代を映す鏡としての機能を果たしているのだと、今回まとめてみて感じました。広告掲載も然ることながら、やはりデザインそのものが最近の熱転写インクによる無機質な乗車券とは異なり、味わいのあるものでした。
また、乗換乗車券の改札穴も、最近では殆ど見なくなりました。車内補充券が生き残っている鉄道で必ずしも入鋏を行っているかというとそうではないという時代ですから、紙切れ同然の薄い乗車券に綺麗な丸い小さな穴が開いているという事だけで“文化”を保存している事に値するのではないでしょうか?
これからも仙台市電の乗車券の画像を得られれば、随時追加していきたいと考えておりますが、やはり扱うモノがモノですので、閲覧される皆様のご協力があってのコンテンツという異質な面はあります。ご尽力頂ける方で画像の準備などが可能な方がいらっしゃいましたら、お気軽にメールでご連絡下さい。
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