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車輛仕様の研究

序. はじめに
仙台市営バスは、現在在籍する車輛の全てが新車導入されており、それだけに本来ならば全ての車輛が同じ仕様で統一されていてもおかしくはありません。しかしながら、実際には製造年次により仕様の差異があり、また経年により仕様が新車と同等のものに改められるケースも決して皆無ではないため、そのバリエーションは非常に豊富なものとなっています。そこで、ここでは目線を改め、車内外の細かい仕様の違いに着目し、その違いを記録していこうと思います。
なお、その仕様の差異は非常に多く、とても短期的な研究でまとめるわけには参りません。また、調査量が多く途中で頓挫してしまう可能性もあります。そこで、私自身を戒める意味も兼ね、誠に見苦しい状態ではありますが完成途上の状態にて公開開始とさせて頂き、今後随時項目を増やして参りたいと思います。やや説明不足の感の否めない項目もありますが、その点は製作途上にあるということをご理解頂き、ご了承頂ければ幸いです。

1. 車輛装備編
(1) 概要
仙台市営バスの車内は、全メーカー関係なく統一されているものの年次単位で異なる仕様と、メーカーによって異なる仕様の二種類に大別でき、前者は降車ボタン、プレート類、新造時のシートモケット、後者は内装品色、ドアブザーなどです。シャーシメーカーではなく車体メーカー単位で違う事は言うまでもなく、たとえいすゞと日産ディーゼルの間でも、どちらも同じ富士重工が製造したボディーを載せている事から、内装はこの両メーカーで共通するという特徴もあります。
ここでは特に目立つメーカー単位での差異と、製造年次単位での差異について触れておきたいと思い、企画をまとめてみました。

(2) 全メーカー共通の内装
その1 降車ボタン
1 もはや少数派となりつつある、90年新造分まで採用されていた降車ボタンです。発光部分は豆電球で、取り外せば簡単に電球のみを交換できる構造です。LEDと比較すれば寿命の短い電球を使っているからこその構造といえましょう。
霞の目営業所所属 日野 U-HU2MMAA 55-37にて撮影

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2 91年より採用され、99年まで継続採用となりました。ボタンの押し心地は非常に柔らかく、また発光部分はLEDになりました。
全国的にもまとまった数の採用例は仙台市交通局ぐらいのみという、極めて稀少な代物みたいですが、仙台市営バスでは最も一般的なボタンです。
霞の目営業所所属 日野 U-HU2MMAA 61-26にて撮影
3 00年より採用されたボタンで、06年まで採用されていました。英文表記が省かれている点が気になるところです。
東仙台営業所所属 三菱 KL-MP35JM 07-27にて撮影
4 07年より採用されたボタンです。車内のカラーデザインと合わせ、黄色い縁取りによって目立つボタンとなりました。
東仙台営業所所属 いすゞ PDG-LR234J2 08-13にて撮影
他にも、車内全体で使われてはいないものの、部分的に採用されている降車ボタンがあります。最後にそれらについて紹介しておきましょう。

左写真はノンステップバスのスタンションポールに取り付けられた専用のボタンです。横幅が狭いことからポールへの取り付けが容易であるということや、構造上メーカーの標準部品を使わざるを得ない場所であることなどから、このような異なるボタンの採用となっているものと思われます。
右写真は何故かカバーが掛けられた状態にあるボタンです。優先席である“ゆずりあいの席”の降車ボタンはカバーがされていますが、それ以外の場所となると限られた車輛のみの仕様であるといえましょう。
左写真 : 岡田出張所所属 いすゞ KL-LV834L1 10-93にて撮影
右写真 : 川内営業所所属 日産ディーゼル KC-UA460KAM 00-62にて撮影
なお、この他にも04年に増備された“るーぷる仙台”専用車の09-20号では、導入年より仕様を優先して降車ボタンが選ばれたため、上記でいう3番のタイプではなく、2番のタイプのボタンが採用されました。

なお、これらの降車ボタンと連動して鳴動するメモリーブザーですが、05年度予算執行分の車輛まではこのようなチャイムが鳴動していました。

その2 降車ボタンのプレート
1 このプレートは、今も見られますが、徐々に少数派となりつつあります。91年新造車まで採用されました。
このような横書きタイプの他、縦書きタイプもあり、設置箇所に応じて使い分けられていますが、極稀に在庫の都合からか、横用を使うべく箇所に縦書きのものがあったり、その逆があったりと、終焉という言葉を感じざるを得ない状況です。
霞の目営業所所属 日野 U-HU2MMAA 55-37にて撮影
2 92年新造分よりこのようなプレートに変更されました。英文表記はやや主旨が分かり難い気もしますが、単に飾り程度に記されたものと思われます。99年新造の“るーぷる仙台”まで採用されましたが、翌00年度よりボタンに直接記述が行われ、一部の例外を除き原則的にこのプレートは廃止となりました。
霞の目営業所所属 日野 U-HU2MMAA 61-26にて撮影
3 こちらは特急仙台空港線専用車に用いられていたもの。デザイン等は上のものと同じですが、素材がアルミ板となっています。
川内営業所所属 日野 U-RU1FTAB 61-20にて撮影

その3 吊り輪

仙台の市バスでは写真のような二点支持型のV字型吊り輪が採用されています。発進・停止の繰返しであるバスの場合は、このような前後動揺に強い二点支持型の方が好都合ですが、あまり他事業者での採用例は見かけません。しかしながら、仙台市交通局ではこれが大きな特徴となっています。
ただし、やはり左右の揺れについては一点支持型と同じく、非常に弱いですので、さほどの混雑でもないものの立つ場合は、吊り輪よりは手摺を掴むのが適当です。
余談ながら、吊り輪の設置された高さは最も低い場所でも1,640mm(03年度導入車より1,600mm)なのですが、仙台の市バスというと吊り輪だけが4列という、全国的にも珍しいほどの高い“吊り輪密度”のため、降車時に頭をぶつけながら、という事は私の場合は当たり前です。要するに急停止などの際にどこにでも掴まるものが確実にあるように、という配慮なのでしょうが、なかなかこれはこれで辛いものがあります。
その吊り輪だけで4列という車輛の車内は下写真のような、非常に白い輪が目立つ状況です。日野ブルーリボンの場合は中扉付近より左側の吊り輪が、また富士重工ボディー装架車は後部では左右1列が省かれた状態と、車体メーカーによって配列が若干異なります。
上写真 : 七北田出張所所属 日野 U-HU2MMAA 62-76にて撮影
下写真 : 岡田出張所所属 日野 KC-HU2MMCA 66-06にて撮影


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その4 運転席後部いろいろ
まずは目立つのがこの緑色のフレームの電照式の掲示板でしょう。本来は広告枠として活用されていますが、このように国際姉妹友好都市バスの場合は、ボディーデザインに用いている都市の紹介が記されています。 以前はこの表示機の中身は路線系統図でしたが、現在はその路線系統図が頭上広告枠へ移動しています。
また、その上には黒い箱がありますが、これは右折・左折・制動時にそれぞれその旨を表示する表示機で、1986年式の車輛より全車輛に搭載されています。
東仙台営業所所属 日産ディーゼル KC-UA460LAN 00-67にて撮影
画像の一部を加工しております。
以前は仙台市バスの乗務員氏名札差しというと他事業者と同じく、前扉上部にあったのですが、現在はこのような電照式氏名札差しとなっています。
しかしこの装置、元々はというと大きさや色から“冷房中”の表示機だったのでしょう。全車冷房達成に伴い不要になった装置がそのまま流用された事になります。
電照式の氏名札差しは1997年式の車輛より新造段階で設置されており、それより前に製造された車輛については今もなお、うっすらと旧氏名札差しの痕跡が前扉上部に確認できることがあります。
東仙台営業所所属 日産ディーゼル KC-UA460LAN 00-67にて撮影
画像を加工しております。
一時的な転属や、転出後何らかの事情からすぐに運用に入った場合など、この表記の改修が追いつかない場合、または必要としない場合はこの写真のようにシールによって所属事業所を修正する場合があります。
東仙台営業所所属 いすゞ P-LR212J 29-05にて撮影
許可を得て撮影。画像は加工してあります。
この氏名札差しの車号表記については車輛によって異なり、登録車号にハイフンが含まれる場合と含まれない場合があります。ナンバープレートの表記ともまた異なるルールがありそうですが...。
霞の目営業所所属 三菱 U-MS729S 57-02にて撮影
許可を得て撮影

その5 座席とシートモケット
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現在、市バスでは上に掲載した3種類と、優先席である“ゆずりあいの席”の、計4種のシートモケットがあります。
左写真のものは、市バスでは割と昔から使われていたシートモケットで、90年式の車輛まで標準的に採用されていました。しかしながら、経年により張り替え工事が行われ、殆どの車輛が中写真のタイプに交換されています。
中写真のものは、91年式の車輛から現在に至るまで全ての車輛で採用されたモケットで、模様も入りました。表面がそれまでの緑一色のものと比べ滑らかですが、柔らかすぎる気もしなくもありません。現在、殆どの車輛がこのタイプとなっています。
最後に右写真のものですが、2007年以降の車輛では内装が八都市共通仕様に改められたため、仙台市交の車輛の内装の特徴であった緑色のシートモケットに別れを告げることとなりました。
左写真 : 霞の目営業所所属 日野 P-HU235BA 53-10にて撮影
中写真 : 霞の目営業所所属 日野 U-HU2MMAA 55-37にて撮影
右写真 : 霞の目営業所所属 いすゞ PJ-LV234L1改 06-11にて撮影
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こちらは特殊な座席です。
まず左写真はアドシート。これは05年3月より交通局にもお目見えした“アドシート”で、シートモケットの上に袋状のシートモケットを被せて加工する、新たな広告媒体として注目されているものです。09年3月まで地元サッカーチームである“ベガルタ仙台”の広告車2台のみで限定的に使用されておりましたが、現在では広告契約の解除と共に見られなくなりました。お披露目当時は今後も広告主が現れれば増加する見通しとのことでしたが、これ以外の採用例は現時点では確認されていません。
そして中写真と右写真は特急仙台空港線専用車の座席です。中写真の導入当初から専用車として使われている車輛については、車体外観の全日本空輸をイメージした塗装と対を成した形になるよう、東亜国内航空のマリーゴールドオレンジをベースにしたカラーリングが施されたという逸話が残されています。
右写真のシートモケットについては、元々観光事業用に使われていた車輛のもので、後に空港線に転用されたもののシートモケットは変更されませんでした。
右写真 : 東仙台営業所所属 日産ディーゼル U-UA440LAN 61-30にて撮影
中写真 : 川内営業所所属 日野 U-RU1FTAB 61-20にて撮影
右写真 : 川内営業所所属 いすゞ U-LV771R 57-67にて撮影

その6 運賃表と停留所名表示装置
1 南光台コミュニティバス用の小型車の場合、運賃が均一制であることもあり運賃表が搭載されていません。そのため、LED式の停留所名表示装置のみが搭載されています。
七北田出張所所属 日野 KK-RX4JFEA 02-47にて撮影 ※ 許可を得て撮影
2 東仙台営業所、七北田出張所、長町営業所に籍を置く車輛と実沢営業所に籍を置く一部の車輛は、この80コマの地下鉄乗継運賃対応型の運賃表を搭載しています。停留所名表示装置はこの写真ではプラズマ式の古いものが写っていますが、車輛の導入年などによりLED式の場合もあります。
東仙台営業所所属 日産ディーゼル U-UA440LAN 61-30にて撮影
3 来る東西線開業時を見越してなのか、2005年より80コマの乗継運賃非対応型の運賃表を搭載する車が登場するようになりました。また、これの導入に伴い運賃表の換装も多くの車輛で行われ、川内営業所、霞の目営業所、岡田出張所の車輛に換装例や新造時からの搭載例が見られます。
霞の目営業所所属 日野 KC-HU2MMCA 00-60にて撮影
4 実沢営業所に籍を置く殆どの車輛は、この60コマの地下鉄乗継運賃対応型の運賃表を搭載しています。他のタイプとは異なり、バックライトの色が黄緑色のものが大多数でしたが、製造時期によってオレンジ色のものも存在しています。
実沢営業所所属 三菱 U-MP618M 57-52にて撮影
5 93年式以降の一部の車輛に搭載されている40コマの運賃表です。コマ数は40コマですが、大きさは50コマ相当のものとなっています。霞の目営業所の車輛を中心に、一部川内営業所の車輛にも搭載されています。40コマ表示の運賃表では最新型ですが60コマや80コマの運賃表に比べると最も数の少ないタイプといえそうです。
霞の目営業所所属 日産ディーゼル KL-UA452MAN改 07-32にて撮影
6 ハードウエアは実沢営業所の60コマの乗継運賃対応型の運賃表と同じですが、これは乗継運賃表示に対応していないタイプです。営業所によっても異なりますが、川内営業所や白沢出張所では最もよく見るタイプです。
白沢出張所所属 三菱 U-MP618M 62-58にて撮影
7 40コマの乗継運賃非対応運賃表では最もよく見かけるタイプです。7セグメントLED式によるものばかりとなった中で唯一のプラズマ式で、そのため動作音が外に響くのが特徴的です。ただし、ほぼ同じ見た目でLEDを用いているものもあるため、識別には注意が必要です。
白沢出張所所属 三菱 KC-MP717M 00-73にて撮影
8 上のものとハードウエアは同じで、こちらは41番から50番の枠に目隠しが施されていないものです。ただし、41番から50番の範囲には発光装置がないため、光ることはありません。
因みにこの写真は、仙台市交通局の路線の中でも最も運賃の高い、1,110円の金額が表示されているときのものです。
白沢出張所所属 三菱 KC-MP717M 00-72にて撮影
9 上述「7」の40コマ乗継運賃日対応運賃表とハードウエアは同じですが、こちらは表面パネルが異なり乗継運賃の表示に対応したものです。東仙台営業所の車輛に搭載されていましたが、大型車については2002年頃に全滅し、中型車についても06年頃には消滅していたように記憶しています。
東仙台営業所所属 日産ディーゼル P-RM81GR改 51-48にて撮影

その7 全車種共通のその他ワンマン機器
集中式操作盤


バス車内の運賃表や方向幕、整理券発券機を一括連動制御するための装置の操作盤です。通常はAGSと連動しているためこの操作盤を使うことはありませんが、万が一連動で動作しない場合、あるいは何らかの不具合により表示や整理券の内容を手動で切り替える必要が発生した場合などは、この制御盤を通じて操作します。なおこの制御盤における方向幕とはフィルム幕時代の方向幕のことで、そのためLED化された車輛では操作しても設定できません。
その上にあるのは停留所名表示器の操作盤で、こちらも通常は連動で動作するためこの操作盤を使うことはありません。
霞の目営業所所属 いすゞ PJ-LV234L1改 06-11にて撮影
車掌台


仙台市交通局自動車部の車輛の大きな特徴として、比較的最近の新造車まで、ワンマン使用を想定しておきながらも、車掌台が中扉横に設けられていた点が挙げられます。00年導入の車輛まで、こうした仕様で登場しています。
その中でも90年式よりも古い車輛については、運転士と車掌の間の連絡用ブザーが揃っていました。
赤丸で囲ったのは中扉の開閉用スイッチ、青丸で囲ったのは連絡用ブザーのボタンスイッチ、緑丸で囲ったのはブザーです。なお、これらのスイッチ類の回路は現在は使用しないため、新造時点より準備工事のみとなっており、回路上は開放されているということです。
実沢営業所所属 三菱 U-MP618M 55-48にて撮影
整理券発券機とカードリーダー


バス事業者によっては、車輛の導入時期によって整理券発券機が異なることがありますが、仙台市交通局の場合は全車輛が三陽電機(現レシップ)製の同じ整理券発券機を搭載しています。カードリーダーおよび整理券発券機の設置位置は、乗車口右手となっています。
長町営業所所属 日産ディーゼル U-UA440LAN 59-69にて撮影

(3) 全メーカー共通の外装
その1 車外インタホーン
他の中乗り前降り方式のバス事業者の所属車輛と同様、仙台市交通局自動車部の車輛にも中扉右側にはインタホーンが付いています。
このインタホーンから入力された音声は車内のスピーカーで流れますが、中扉が開扉中であるときを除き回路が開放されているため、中扉が閉扉しているときは使用できません。
実沢営業所所属 日産ディーゼル U-UA440LAN 62-50にて撮影

その2 乗降中表示灯
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93年式(リフト付き車については92年式から)の車輛より中扉もしくは前扉のどちらかが開扉中に点灯し、後続車のドライバーに知らせる表示灯が設置されました。
フレームの色は導入年によってまちまちで、実はハードウエアと塗装との間の相関についても研究の余地が多分に残されているようです。写真6については車椅子昇降用のリフトを備えた車輛のみに見られるもので、右側のディスプレイには「車いす」の文字が表示されます。リフト動作時に両方とも点灯します。写真7については、98年に2台が導入された日野製のワンステップバスのみに採用された横置き横書きのもので、この2台のみに搭載されていましたが、08年より0061号の装置が写真8のものに交換されてしまったため、残り1台限りとなっています。
写真1 : 実沢営業所所属 日産ディーゼル U-UA440LAN 62-50にて撮影
写真2 : 白沢出張所所属 いすゞ KC-LV280N 00-77にて撮影
写真3 : 実沢営業所所属 三菱 KC-MP617M 64-52にて撮影
写真4 : 東仙台営業所所属 日産ディーゼル NE-UA4E0LAN 02-26にて撮影
写真5 : 実沢営業所所属 いすゞ KL-LV834L1 07-21にて撮影
写真6 : 東仙台営業所所属 三菱 PA-MK27FH 06-12にて撮影
写真7 : 東仙台営業所所属 三菱 U-MP618M改 59-99にて撮影
写真8 : 岡田出張所所属 日野 KC-HU2MMCA 00-60にて撮影
写真9 : 霞の目営業所所属 日野 KC-HU2MMCA 00-61にて撮影

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